第一章 始まりは終わりの地で

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「一条八鹿の処分についてはいかように?」  吉備氷雨――碧と舞香の母――が訊ねた。博人率いる“虚無の徒”。一条八鹿はその一員として働かされていたが、それにはわけがある。  彼女は元々、以前に離反行為とも取れる独断行動を取ったが故に罰せられた身だった。裏切り防止用の霊具を体につけられていたのだが、“虚無の徒”はその装置の制御を乗っ取り、彼女を脅迫して自分たちの作戦に利用した。  悪役のやりそうなことだ。だが、元々その悪役のやりそうなことを現陰陽寮がやっていたのだが。“虚無の徒”は現陰陽寮の方法を利用した。現陰陽寮のやり方を皮肉っているかのように霧乃には見えた。 「彼女は無理やり、やりたくないことをやらされてたみたいだったようねぇ」と緊張感のない声で義賢が擁護した。にっこりと笑っている顔は美しいが、影葛にとっては嘲笑にしか映らないだろう。何を見て取ったにせよ、決して表情には出さないだろうが。 「そ、それに彼女は一真君達を救う行動もとっています」  笹井城阪が緊張でうわずった声で続いた。現場を見ていたのだろうかと思っていると、城阪は懐から写真を一枚取り出した。ただの写真でないことは明らかだった。  そこには一条八鹿が写っている。その周りで霊力が渦巻いている。  あまり知られていない事というよりも、あまり起こることではないが、普通写真に霊力の動きは映らない。義賢あたりがなにか小道具を貸したのだろう。
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