第一章 始まりは終わりの地で

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†††  式部姉妹は悪くないのかもしれない。ただ、タイミングが悪かっただけだ。しかし、「進捗状況はどう?」なんて聞くのはやはりどうかしているような気もする。  月はあれから無言になってしまった。何度か何かを言いかけては止めるなんてことが続いている。 一真も一真で、月に話しかけることをしない。いじめているようで悪いが、どう話しかけたらいいのか分からないのだ。  月はこと人間関係を築くということが苦手で、元々ある人間関係が変わったり壊れたりすることを極端に恐れてもいる。未来が一真に接近したことに、月は動揺している。  もしも、思いっきり敵対できる人間ならば月は遠慮しなかっただろう。  だが、未来は月にとっても今や大切な友達である。崩れることを恐れている彼女にとっては手も足も出ない相手なのだ。 ……などと他人事のように推察している一真もまた、月と未来どちらの関係も崩したくないと思っているのだから、月とさして変わらないのだが。  宿坊では現陰陽寮の幹部達による評議会が行なわれている。そこで一真達は道場へと行き、怪我人の手当などを手伝うことにした。  月と一真は並んで歩いているが、左右対称に別々の方を見ている。常磐と佐保の姉妹は「さっきの質問はまずかったかしら」と顔を見合わせ、その後ろで碧と舞香の姉妹が「余計なことを」と怒っている。どちらの姉妹も余計なお世話であることに変わりはないのだが。
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