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碧がその様子を見て、呆れ気味に溜息をつき、彼女達に話しかける代わりに医者(なのか?)に話しかけた。
「トンベおじさま。八鹿さんは大丈夫なんですか?」
「気が散るからそういう質問は治療が終わってからにしてくれ。と言いたいところだが、もう手の施しようがねーから、その質問答えてやるよ」
「って!? 手の施しようがないって……」
それほどの重体であるとは思わなかった。さっと顔を青ざめさせる一同に向けて、トンベと呼ばれた男は場慣れしているのだろうか、ごくごく落ち着いた様子で「こいつの体を見てみろ」と親指でさした。
八鹿は上を殆ど脱いだ状態であるものの、体は包帯が巻かれ、その上から霊符も貼り付けられており肌の色は殆ど見えない。ただ、微かながら合間から光が漏れていた。汗ではない。
一真はそれが霊気の流れであることを一瞬で見抜いていた。
「こいつは大したもんだ。俺が仕掛けた裏切り防止用の霊具は、体内の霊気を半減させ、更に霊気を霊力へと変換する流れをも遮断する。霊術を使えないようにするためにな。だが、こいつの体は霊具の遮断機能に抗い、内に溜まった負の気を浄化しようとしているんだ」
言われてみてから、改めて見ると八鹿の体の至るところには負の霊気が溜まっていた。憎しみ、悲しみ、怒り、負の感情は一定量を超えると邪気となる。だが、八鹿は体の中に溜まった邪気を自分で浄化しようとしているらしい。
「……それに加えて、大きく失った霊気も自然に回復しようとしている。いやはや心配するだけ損したってもんだな」
うんうんと頷くトンベの前で困惑する一同を代表して、碧が訊ねた。
「で、『手の施しようがない』というのは?」
「そら、お前、医者の俺にできることがなにもねーってことだよ」
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