第一章 始まりは終わりの地で

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「なんてな。お前さんもうわかってるみたいだが、現陰陽寮じゃ即戦力になるようなやつを牢獄にぶちこんでおくだけのことはしないのさ。縄つけてみたり脅してみたり、甘い誘惑で釣ってみたり、あらゆる手を使って敵と戦わせるよう仕向ける。それが現陰陽寮さ」  慧玄は剃刀みたいな瞳で一人一人に視線を合わせていき、一真で止まった。  「陰陽師ってのは大体が裏でこそこそして、事を起こすもんさ。だから、監視しつつ戦わせる。激戦地で戦わせることでそいつも出し惜しみなんてスカした真似はできねぇっつうことだわな」  決して温情ではない。むしろ、敵だった組織のために死ぬまで働かされることだってあるかもしれない。「敵だったお前を生かしておいてやってるのは誰だ?」と常に問いかけているのかもしれない。  悪役そのもののやり方だ。 「ま、組織として陰陽師がやっていくためにはそんくらい必要ってことさ。大体、陰陽師なんてやってる連中の殆どは必要に駆られてって場合が多い。個人的に抱えてるなにかしらの事情でな。んで大体その事情絡みで現陰陽寮と関わり合いになるのさ」  その関わり合いのすべてが友好的なものばかりではないだろうし、一度は友好的でもそれが長く続くとも限らないだろう。
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