第一章 始まりは終わりの地で

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 一人一人がアクが強く、並々ならぬ者達である以上、彼らを組織として一つにまとめておく方法も特異なものになるのかもしれない。  だが、果たしてそこに信頼という言葉は生まれるのだろうか。 「問題が多くあるシステムだってことには同意するさ」  慧玄は一真の思考を読み取ったかのようにそう付け加えた。しかし、それ以上横道に逸れた話をすることもなかった。 「で、だな。またまたなんとも絶妙なタイミングというか、大峯山での天冑府君祭の影響なのか――ある場所での怪異が再発した」  天冑府君祭。それは、沖博人が復活を遂げる際に、行われた儀式だった。元は高位の身分にしか使われないものとされていたが、その儀式の発動直後から各地で霊脈が不安定となっているらしい。その影響で、比較的弱く陰の界から通り抜けが出来ないような物の怪が、陽の界へと姿を現すようになっているらしい。  要するに怪異が勃発しやすい状況になっているわけだが。 「再発?」  月がぽつりと皆の疑問を呟いた。慧玄は「あぁ」と言って晃を指し示した。 「お前さんの故郷である村のかつての怪異を引き起こすきっかけになった怪異でもある」 「詳しく聞かせてほしいですね」
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