第一章 始まりは終わりの地で

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 だが、それは言い訳になるのだろうか。ある日突然、怪異で自分が死んだ時、家族はどう思うか。それを全く考えたことがないとまではいかないまでも、戦いに赴いている時は忘れてしまいがちだ。 「だがな、俺達現陰陽寮の都合は別としても、だ。一真君を取り巻く状況は大きく変わってしまった。お前さんにしたって他人事じゃねぇ。誰かを頼るにせよ、自分で対処できるようにするにせよ、最低限自分の身を守れるようにする必要性に迫られているのさ。一真君の場合は単純に力をつければいいってもんでもねぇ。怪異の一つ一つをその身で感じ、来るべきであろう〝虚無の徒″との戦い、叔父上との再会に備えなきゃなんねぇ」  ここでもしも、一真が逃げたとしても。次の怪異がまた起きる。そこからさらに逃げたとしても。いずれ来るであろう〝再会"は避けることは出来ない。だとすれば、向こうから来る怪異に応じて、戦い経験値を積んでおくべきではないか。  それが慧玄の持論であるらしい。
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