第一章 始まりは終わりの地で

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「そうね。怪異そのもので得をする人は少ないかもしれない。けれど、怪異が巻き起こす影響は計り知れないわ。怪異の規模が大きくなればなるほど、そこから生み出される負の気は大きくなり、強力な邪気を持った物の怪が生み出される」 「……だから、それで誰が得するんです?」  晃はまだわからないというように、蒼へと問いかけた。怪異は大きくなればなるほど、力を増す。人間も獣も世界そのものを巻き込みながら。  静かな怒りが悪友から湧き上がるのを、一真は感じ取っていた。その熱にこちらまで焼かれてしまいそうな程だ。無理もない。晃の家族は物の怪によって殺されたのだから。 「力を得るため、ね。力にも色々な類があるわ。彼らが使った力は、毒ガスや爆弾を使ったテロと同種のものだと思えばいいわ」 「……んで、その後始末に失敗した現陰陽寮はさしずめ、不測の事態には常に対応出来ない対策チームってところですかね」  晃の吐き捨てるようなセリフに動揺したのは子ども達だけだった。晃は周りの反応など目に入っていないかのように続ける。 「博人ってやつが教えてくれたってか頭に直接送り込んできて知ったことなんで、どこまでが信用していいのか知らないんですけど、俺の村が壊滅したのって、その二十年前の怪異で処理しきれなかった分の余波のせいだと。少なくとも現陰陽寮は俺の村で怪異が起こることは知ってた」  激しい感情に呼応してか、晃自身の鬼気までが波立った。 「概ね正しいわ。晃君の言うことは」 対して、当事者だった蒼の言葉は静かな湖面のようだった。 「怪異が起きたのは、海上都市――竜宮。当時の最先端の技術を駆使して建造された『未来ある都市計画』の一端――」
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