第二章 蒼海の宴

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††† 「増えすぎた人口対策、地球温暖化による海面上昇への対処、地理的な制約を受けない巨大滑走路の建設、科学研究機関が求める理想の実験場。まるでSFの世界ね」 「俺達のような存在はますます肩身の狭い思いになるだろうな」  海面に浮かぶ都市――それはまさに科学の結晶と呼ぶにふさわしいが、同時に神秘的でもある。人工的に島を作るという発想自体は決して新しいものではなかった。海上から航空機を発着させる航空母艦、ヘリポートなどはその発想においても技術においても、原点と言えるだろう。  ただ、二人の目の前にある都市は、洗練されていた。海上で航空機を発着させるためであったりとか島の延長部分といった、補助的な印象をまるで感じさせない。  住宅に必要な設備も、娯楽のための設備も、交通の整備、更には医療機関、教育機関関連の設備も備わっていた。  海上に広がっているのは三つの円状の島だ。それらは巨大な鉄橋で繋がっている。  三つとも島は自然のものではなく、メガフロートと呼ばれる超大型浮体式構造物、つまりは、人工的に作られた巨大な島である。  基盤となるのは六角形状の構造物を蜂の巣のように集合させ、接合面をゴムガスケットで四角く囲み、壁間の水を抜く水圧接合を採用。その後に高強度コンクリートとスタッドによって二次接合される。その上に高さ50mの下部浮体を緊結拡大し、人工地盤化した後に、陸上工事の手順で建築の構築がなされている。  建物を海上に積み上げていくのではなく、骨格となる構造体を常に地上面で施工し、組み上がった構造体は海中に一旦沈め、 骨格が組みあがったら、海中の浮力を利用して一気にリフトアップ。地上での施工のために効率も安全性も高いとされている。
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