第二章 蒼海の宴

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そうして作られた人工島。完全に完成しているのは、三つのうちの中心部分となっているうちの一つだ。 〝竜宮一号島″と名付けられたその島は海上都市の核を為す部分である。総面積は5.2キロ平方メートル。日本最大の人工島として今、最も注目されている。  その島の大きな目玉となっているのが、中心部に聳え立つ高さ1000メートルのタワーだ。空に向かって段々とドーム状に広がるような作りになっており、一見すると鉄で出来た花のようにも見える。  電波塔と呼ばれており、その名の通り、頂上にはアンテナが設置されており島全体に情報を発信する為の施設が集約されている。が、もちろん、それだけならこれほど巨大な施設は必要とされない。  太陽光発電に、植物プラントと研究施設。この島が自給自足していくための設備の数々だ。タワーの横にはヘリポートも設置されており、二人が向かっているのはそこだった。 「ヘリは初めてかっ? なんだか落ち着かねぇみたいだが!」 「大丈夫よ。ありがと」と、蒼は真二の言葉にそう返した。確かにヘリは初めてだったが、怖いとは思わなかった。空から見える景色は心の中に平穏をもたらしてくれる。  唯一、残念なのはエンジンの音が想像以上にうるさかったことだ。自分の声がまるで遠くから聞こえてくるような変な感覚。唾を呑みこむと多少楽になると言われてやってみたが、おまじない程度の効果も無かった。  これからの任務を考えると、少しでもゆとりが必要だった。
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