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「しっかしまぁ、連中、本気でやる気なのかね」
「勿論、そうに決まっているわ。でなければ現陰陽寮が私達をこんなところにまで派遣する筈ないもの。一体、どんな権限を使ったのか、ヘリまでチャーターして」
ヘリのパイロットは、現陰陽寮の協力者の一人であるらしく、二人の会話が聞こえていたとしても、問題はなかった。
「“こんなところ”か」
「あら、別に悪い所だとは思ってないわ。あの組織は、『神への冒涜』だなんて言ってるけど、美しい所だと思う」
どこかさばさばとした蒼の調子に、真二はそうじゃなくて、と罰が悪そうに言った。
「悪いと思ってんだよ。お前達“二人”にとっての大事な日になる筈だったんだからな。今日は」
途端、ガタリとヘリのハッチが開いた。
「……私、ここから一人で行く」
「わぁっ!! それは洒落にならんからやめろ!」
「大丈夫、私乗矯術使える」
「お前が高さ100メートルから落とされても死なない奴だってのは知ってる!! そうじゃなくて、今回の作戦は例の組織をあぶりだすのが目的――隠密にって話だろ。こんなところで乗矯術なんて使うなっての」
集中砲火を浴び――たとしても、蒼は力でねじ伏せられるだろう。そうなれば、むしろ喜んでヘリから飛び降りてもらうところだが、逃げられたり、身を潜められてしまっては元も子もないのだ。
ガタリとハッチが閉まり、蒼は何事も無かったかのように席についた。
「勿論、冗談よ」
「心臓に悪い冗談はやめてくれ」
「……戦いの前だし、あまり考えないようにしているの」
蒼の言葉に、真二はそれ以上の言葉を挟まなかった。つい先日のことだ。
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