35人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
†††
彩弓が凧で空を飛んでいた。文章にしてみると思わず「は!?」と言ってしまいそうな光景が目の前で繰り広げられていた。実際、舞香はその光景を目の当たりにして、一瞬、現実を受け入れるのを拒否しそうになった。
空高く上がっていたのは、季節外れもいいところの凧だ。その上に彩弓らしき人影が乗っかっている。いや、あれは乗っているというよりも、しがみついていると言った方が良いだろうか。
凧は魚のエイのような形をしたもので、どことなく生物的な動きを感じさせる。
「え……は? えぇ??」
庭に出た瞬間に、非日常な光景を目の当たりにして舞香が顎が外れそうな程口を開けていると、縁側に座っていた痩せ男がカラカラと笑った。
「よう、舞香ちゃん。そんな口開けてると顎が外れるよ? 腕だってまだ治ってないんだから、あんまり体に負担掛かることしないほうが――」
「ちょっ、ヨウさん?! あ!! さては、また変なモン作ったんだね!?」
「変なモンはないだろ……、一真君が着てるあの狩衣だって俺……じゃなくて、あれは俺の知り合いの変な関西弁のねーちゃんが作ったんだけども、それにしたって変なモンはないだろ?」
「そんなことどーでもいいから、はやく降ろしてよ!!」
最初のコメントを投稿しよう!