第二章 蒼海の宴

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†††  ヘリはその後、島の周りを旋回した後にヘリポートへと着陸した。蒼と真二の二人はそこで、竜宮建設責任者からの歓迎を受けた。  表向きは、地鎮祭(とこしずめまつ)り――ビル等を建てる時にその土地の神に利用の許可を得る儀式――を執り行うことになっている。  地鎮祭とは言うものの、殆どの場合は土地神をわざわざ呼び出してということはせず、霊気を安定させるだけで良いことが多い。だが、今回ばかりは少し事情が違う。ここの海にはそれでは済まない程の大物が眠っているのだ。  表向きとはいえ、こちらはこちらで気の抜けない仕事でもある。 「ようこそ、おいでくださいました。竜宮へようこそ。私はこの島の建設責任者、長嶋助蔵でございます」  長嶋助蔵は背の低い痩せた男だが、グレーのスーツをぴったりと着こなしており、対人関係では一切の隙を感じさせない。 「今日はよろしくお願いします。栃煌神社の宮司が吉備真二と」 「宮司兼巫女の春日蒼です」  真二は常装の狩衣姿だが、正装用の黒袍と袴も用意してきている。蒼も狩衣姿であり、長嶋はおやっと思ったようだったが、蒼は宮司も兼用しているのでさほどおかしなことではなかった。正装は勿論巫女装束ではあるが。 「慣れないヘリの旅で少々、疲れました。休めるような部屋はありますかね」 「えぇ。勿論です。明日の地鎮祭まで使っていただける部屋を二つ用意しております」  なんとも気前のいいことである。それに長嶋の頭の下げようも、どことなく過剰な気がしてならなかった。
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