第二章 蒼海の宴

8/26
前へ
/183ページ
次へ
「慣れないヘリの旅で少々、疲れました。休めるような部屋はありますかね」 「えぇ。勿論です。明日の地鎮祭まで使っていただける部屋を二つ用意しております」  なんとも気前のいいことである。それに長嶋の頭の下げようも、どことなく過剰な気がしてならなかった。 「あぁ、しかしお部屋にご案内する前に、あなた方にお会いになりたいという方がおられますよ」 「……我々に? そんな予定は」 「是非、会ってみましょう」  蒼の言葉を抑えるようにして、真二はそう応じた。蒼は物の怪相手の戦いでは無類の強さを誇るが、真二は対霊術能力者のエキスパートだ。対人戦ではいかに相手の心理を見抜くかが勝利の鍵となる。そして、対人戦における勝利とは必ずしも相手を打ち負かすことと同義になるとは限らない。 「一体どなたでしょう?」 「はい。なんでも宮内庁の関係者だとかでして……私どももあまり詳しくは」 「宮内庁……?」  突然飛び込んできた単語に蒼も真二も戸惑った。宮内庁は、皇族に近侍した古代からの官職をその淵源とする日本の行政機関だ。皇室関係の国家事務を担当するところであるが、強いて蒼達に関係することと言えば、「儀式」関係のことが当たるかもしれない……が、蒼が知る限り、栃煌神社がその手の儀式に関わったことは無い筈だ。  流石の真二も頭を抱えた。 「……あぁ、やっぱ会いたくないかもなぁ」 「はい?」 「いや、なんでもないですよ」
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加