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敵の罠だとすれば意図が読めなすぎる。とすれば、第三者の介入か今回の事件には無関係の人物である可能性すらある。
「とにかく会ってみましょうよ」
「お前はあんましこういうことで緊張とかしないんだな」
「あら、できれば距離は取っておきたいとは思ってるわよ」
蒼も真二も正式に宮司としての資格を得てはいるものの、本来の仕事は陰陽師である。
陰陽師という官職は明治の近代化に伴って廃止されている。以降、それを名乗るのは表の世界においては殆どが自称だ。いざなぎ流のように、陰陽師の血筋を名乗る者達もいるものの、宗教という大きな枠組み、カテゴリーの中に入るだけに留まっている。
ただし、裏の世界――こう言うといかにも胡散臭いが――において、陰陽師とは真の意味での霊能力者であり、怪異と対峙する者の象徴的な存在である。
果たして、その「宮内庁の関係者」と名乗る者がどちらの立場で近づいてきているのか、それによって対処の仕方が大きく異なる。
できれば、表向きの立場での話で済めばいい。蒼はそう願った。だが、一方でこのタイミングで、これから起きようとしている事を考えれば、その願いが叶う可能性は限りなく低い。
「せめて、穏便に済めばいいのだけど」
無論、現実はそれほど優しくはなかった。
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