第二章 蒼海の宴

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†††  彼の“家系”は、厳密に言えば陰陽師の系統ではない。だが、とある鬼の片腕を切り落としたことで、その名を陰陽師の世界にも轟かしたのだった。  “髭切りの太刀”と呼ばれる伝説の太刀は、銀勇のベルトに装飾のように括り付けられている。それが妙なことに似合っている。拳銃もまた、本来なら違和感を覚えるところだが、様になっていた。  その場にあるもの全てを自分色に染め上げる力、いや力というよりもカリスマ性のようなものが彼には備わっていた。 「宮内庁という名が出た時には驚いたもんだが、一体どういうことなんだ」 「宮内庁の関係者……という点は間違ってはいませんよ。私表向きは宮内庁お預かりの警備官ということになっていまして」 「そいつはいいご身分なこった」 「実はそうでもないんですよ。表向きとは言いましたが、厳密に言えば、非公式の警備官。名前だけは書類上に載ってはいるが、他の警備官と同じ仕事をしているわけではないのですよ」    ややこしいなと、真二は苦い顔になった。銀勇はフッと微笑んだ。 「政治的な理由でしてね。簡単に言いますと、政府の中に陰陽師――霊的な力を持つ者に目をつけた人達がいたのですよ。これを“国家の力”として、運用したいと考えている勢力が」  それを聞いた真二は、その先の話を察したように「あぁ……」と冷めたようなため息を吐いた。蒼も大体のことは把握した。
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