第一章 始まりは終わりの地で

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 メガネの蓬髪。地味な和服姿の男はすっかり栃煌神社に寄るのが日課になってしまったはぐれ陰陽師、ヨウだ。彼が口にした通り、陰陽師としての道を歩みつつある一真に霊具としての狩衣を用意した男だ。そして、なぜだか知らないが、ここに寄る度に万単位の賽銭を賽銭箱にねじ込んでいくのが、舞香にとって頭痛の種でもあった。 ――賽銭が万単位でおかれていくと、真っ先に私が何か変な集め方したんじゃないかって疑われるんだからなぁ……。 「それと、あれは霊具っていうよりはどちらかというと式神なんだけどね……人造型の」 「さ、っ、さ、と、降ろしてよ!!」  眉間に青筋立てて“お願い”してようやく、ヨウは彩弓を乗せた凧を地面へと降ろした。それはゆらりゆらりと翼のように胴体を羽ばたかせて降りてくる。かなりでかい。その質感は紙に近いが霊術で手を加えられている筈だから、見た目以上に頑丈には出来ているのだろう。それに、ヨウはこれが式神だと言っていた。 「た、たのしかったたたた!」 「声震えてるんですけどぉ!!」  ガタガタと歯を震わせた笑顔を見せる彩弓に、流石のヨウも笑顔をひき攣らせていた。そんな彼を舞香がジト目で睨みつける。 「お姉ちゃんいたら、ヨウさんびっくり人間なみに体を折りたたまれちゃうところだったね」 「はは……大丈夫。大丈夫。俺にはちゅーじつな式神が何体もいるから……」 「助けないでありんすよ」  どこからともなく――恐らくはヨウが縁側に適当に放り投げている太刀の方から――聞こえた声はヨウの忠実な式神のものだ。 「薄情者め……」 「いや、どーみても自業自得だし……」 「だな」  さっきとは別の声が複数聞こえる。少なくとも式神が何体もいるという言葉に嘘偽りはない。舞香は、はーっと溜息をついた。改めてまじまじと凧みたいな式神に目を向ける。何度見ても、それは舞香の知る式神とは大分イメージがかけ離れていた。
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