第二章 蒼海の宴

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 ここ数日、連続して起きた怪異。そのいずれもが人為的に引き起こされたものであり、どの事件にも共通点があった。 「術者は全員道満の術を継承した者だと主張している。まぁ、どいつも実力は大したことなかったんだが、ドーマンの印を使用していた。んで、そいつらから聞いた話では、連続して起こした怪異はいずれもが実験。本番はここ、竜宮で起こすんだと」 「成程、私の情報と一致しますね」  真二の話に、銀勇は合点が言ったように頷いた。一体どこから仕入れた情報なのかは言わない。抜かりの無いことだ。真二の捕まえた術者達はいずれも銀勇程、油断ならぬ相手ではなく、口を割らせるのは容易かった。 「竜宮には、政府からも支援金が出されている。ここに注ぎ込まれた労力もそれがあったればこそ。だが、それが影で暗躍するこの世にまつろわぬ者どもに狙われている。脅威がまさに迫っているのに、対処することもできない。なんとも脆弱だとは思いませんか」  “まつろわぬ民”。それは権力者に従わぬ者達の通称だ。  多数からはみ出た少数派。異端者達。  多数に排斥されるが故に、霊術という牙を持ち、道満という伝説を信奉した。  それは力ともなるが、同時に自らの首を絞める呪いでもある。 「だから、お前の仲間になれということかい?」 「今はそこまでは言いません。ですが、今回は犯人探しと、犯行の阻止に協力してほしいのです。討つべき敵は同じなのですから、異存ないと思いますが?」  銀勇の口調は軽い。軽いながら、こちらに選択を許さないだけの静かな気迫がこもっていた。自然とこちらに戦いの間合いを意識させるだけの威圧感はあった。  数秒考えて、真二はその威圧感を軽く払った。 「まぁ、いいぜ。だが、こっちはそちらの指示には従わん。こっちの元々のプランで行かせてもらう」 「ま、それでいいですよ。お供させていただきます」
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