第二章 蒼海の宴

21/26
前へ
/183ページ
次へ
 ここ最近栃煌市で起きている人為的な怪異は、メディアでも取り上げられる程の騒ぎになっていた。流石にニュースで取り上げる程にはなっていないものの、このまま放置すれば、陰陽師や物の怪の存在が表の世界に明るみになる危険があった。  無論、そんなことよりも重大なのは、この都市に集まった大勢の人間を護れるかどうかではあるが。  これまでの怪異は、どれもが効果を試すような節があり、範囲も限定的であった。  だが、情報によればここで起きる怪異は連中にとっての“本番”。その理由も、“竜宮”建築時から起きている騒動を見れば察しがつく。  刀真と蒼の二人は観光客を装い、竜宮建築への反対デモを起こしているリーダーと接触する予定だった。 「このまま、デモを続ければ、大勢の人間が死ぬことになる」  刀真がリーダーへと送った手紙の最初の一行。挨拶もなく、いきなり本題をぶつけるやり方を刀真は好む。  交渉が苦手なのは自他共に認めるところではあるが、今回のような切羽詰まった状況では、むしろ突破口となることも多い。  刀真は、竜宮が霊術者の集団に狙われていることを、霊術や陰陽師の事を知らない者にも分かるようにかみ砕いて説明した文と返信用の封筒を添えている。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加