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結局、刀真は自分の分の抹茶と羊羹を頼み、氷雨は自分で抹茶パフェを買うはめになった。氷雨からは散々「そんな気が利かないことで、結婚なんかできないぞ」とかなんとか言われたが、相手にするつもりはなかった。
――しかし、蒼は気にするだろうか。
蒼は自己主張が激しい女性ではない。だからといって、こちらが無神経でいいということにはならないだろう。
それはそれとして、抹茶パフェは金欠の問題でやっぱり奢れないのだが。
既に葛島はどこかに席を取っている筈だった。ふと辺りを見回す。写真で見た顔を探し店内に目をやる。襖で仕切られている部屋もあるので、襖を締め切られていたら、気が付かないだろうが、流石にそんな馬鹿なことはしないだろう。
ふと、襖が半分程開いている部屋を見つけて、刀真はそこを覗き込んだ。
「ここにいましたか」
「お、あんちゃんだな? ウチに妙な手紙送ってきたのは」
思ったよりもフランクな男だった。関西人特有のイントネーションがあるものの、関西弁ではない。
「まぁ、かけてくれよ。話は食べながらでもいいか? そこの姉ちゃんもさ」
刀真と氷雨は了承し、葛島の反対側の席に腰を下ろした。刀真は正座、氷雨は脚を崩して座っている。
「竜宮建設反対デモのリーダー……にしては、妙にこの島に馴染んでますね」
「ははは、それを言われちゃな。あんだけ反対運動して、もう建設されてしまったもんだ。そろそろ運動の趣旨を変えていかないと、って思ってたところだ」
「趣旨……?」
「あんちゃんたちには、ウチらがどう見えてる?」
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