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それに、ただでさえ口下手な僕が、こんな奇妙な出会いのあとで、しかも普段の
生活圏の中では絶対に関わりあうことのないであろう人種に、気の利いたかける
言葉などみつかるはずもなく、結局僕はひっくり返された時にこぼれたウィスキ
ーの残りにちびりちびりと口をつけながら、少女にとっては、いつものつまらな
い大人がするであろう、いつものつまらない質問をおずおずと口にするしかなか
った。
「ていうかさ・・・。君って何歳?」
「14」
「ブッ!!!はぁ!?14!?」
その答えは僕の口から含んだウィスキーを吹き出させるには十分だった。確かに
さっき見上げた時に感じたほのかな幼さは、その美人でも不美人でもない顔を1
0代かな?と思わせたが、まさか14とは思わなかった。僕はあらためてまたス
マホの明かりに照らされた少女の、丁寧に塗り重ねられている目元のメイクをみ
つめながら、女性という存在は・・・いやメイクというものは恐ろしいものだな
と、これまでにも抱いていた感想を新たにしていると。
「だからなに?文句あんの?」
「いや・・・。文句はないけどさ・・・。つかみえないね。14って事は中学 生?こんな時間にこんなトコでなにしてんの?家で心配されてんじゃな の?」
「そうJC。中2。つか今日はツレと渋谷いったし、メイクかなり盛ってるし、
だからじゃね?家はウザイから出たし。てか何なの?もしかして今、説教され
てるわけ?死にかけの自殺君に?はぁって感じなんですけど。」
と吐き捨てるように言いながら、やっと少女はスマホから視線を外して、それを
少し鋭く尖らせると一瞬、無遠慮に僕の方に向け「ブハッ!!マジうける!終わ
ってるヤツに何か言われてるんですけど!!」それをまたスマホに戻しながら今
度は一転、目の下だけで形だけのように笑った。
僕は「いや。そんなつもりはないんだけど・・・。」とまた黙り込むか、同じよ
うな少女にとっては説教らしい言葉を続けるしかしかなく。
「えっと・・・。そうだな・・・。」
「え!?なに!?」
「いや・・・。ていうか家出て毎日なにしてんの?学校もいってないんでしょ?」
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