第1章

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もう僕のため息は止まらなかった。まるで日本語を喋る事ができない迷子を相手 にしているようで、最早、なにも喋る気力もなくなって、下を向いて黙り込んで しまい。その後も少女はしばらく同じ調子でまくしたてていたが「マジふざけん なって使えねー!!つかこの顔じゃ勃たないわけ!!?本気でイラつくんですけ ど!!空気よめよ!!だからそんななんだよ!!」という悪態を最後に、ついに 汚い言葉もいいつくしたのか、またあぐらをかいて座り込んでしまった。 だが結局、僕はこの夜この少女とホテルに行ったのだった。なぜなら僕のこのど うしようもなくずる賢く、けれどもそのくせいつも何かに負け続けた脆弱な思考 が、この夜に身を任せてしまおうと思った流れよりも、より楽でなおかつ水が澱 んで腐るように汚い新たな流れをいつのまにか思い浮かべていて、僕は決断する どころか迷うよりも先に、いつものようにその方向に流れて行った。マフィアの 常套句にもあるように「汚水は下に向かって流れる」のだ。どんな事があっても 汲み上げられることはない。 それから二人でどれくらい黙り込んでいただろうか。1時間かそれとも2時間ぐ らいにはなるだろうか。僕はその薄汚い思考を無意識に組立ながら、さめてしま った酔を取り戻すように、あらたに開けた2瓶目のウィスキーをあおり続けて、 少女はまるでそうしていないと「私」という自我をたもっていられないかのよう にスマホをジッといじくり続け、多分ほかの「客」とよんでもよければそんなも のを見つけようとしていたのだろう。そして僕はたぶん鏡の中でも見たことのな いほどの無表情で「ねえ・・。」とこう切りだした。 「なに?つか誰かつかまるまでここ動く気ねーし。あんたこそ結局死ぬ根性ねー んだろ?いいかげんどっか行けってマジ」 「いや・・・。なんていうか・・・。行くか?ホテル」 「は?なにいまさら。つかこの顔じゃ勃たないんじゃなかったっけ?」 「いやいや、それ俺が言ったんじゃないし。つかヤらないよ?どうせ今夜は俺も もうそんな気分じゃないっつーか死ぬ雰囲気でもないしさ。どうせラブホに泊  まるし、一緒に来て寝りゃーいいじゃん。あともっと儲かるやり方おしえてや るよ」
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