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「…どうも。」
あたしは少し下を向いて返事をした。
湊の手があたしの耳へ伸びてきたとき、
エレベーターの到着音がなった。
耳にかけられた手はそのまま髪をすくって
下に落ちた。
傍から見たらあたしたちは
恋人同士に見えるのだろうか?
今日の湊はいつもより優しい眼差しを
あたしに向けてくる。
今までそんな愛しさを込めた
眼差しで見てくるのは
抱かれているときだけだったのに。
…正直、調子が狂う。
そう口にして伝えたかったけれど、
この男にそんな自覚があるのかも
わからない。
それに、心を開いた相手には
こんな眼差しを向けるのが
彼のやり方だとしたら、
そこにとやかく言うのはまた違うと思った。
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