変化

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湊が連れてきた場所は ひどく整った品の良い顔とはミスマッチな 大衆的な焼き鶏やさんだった。 カウンターが数席とテーブル席が いくつかあり、綺麗でも汚くもなく、 けれど、どこか趣のある店内だった。 湊と今まで数回食事したような綺麗で 品のあるフレンチレストランなどではなく、 こういった場所に連れて来られたのは 初めてだった。 メニューを見ながら 「お任せでいい?」と聞かれ、 「…うん」と答えると、 こちらを見もせずに 「なに?」とだけ言葉を落とされた。 「…少し、意外だなって思っただけ」 素直に言うと 「これでも学生なもんで」 パタンとメニューを閉じると、 「ここの焼き鳥うめーんだ」 ニッと八重歯を見せて、 いつもの得意げな眼差しに 少し無邪気さを加えた笑顔を見せてきた。 …なんだ。こんな顔もできるんだ。
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