4/10
前へ
/40ページ
次へ
    「お願いっ!!何でもするからっ・・・」 由美子は涙を流しながらそう叫び、 自分に背を向けた籐谷の背広を掴む。 フッと優しい笑みで籐谷は振り返った。 そして、幾筋も落ちる涙で濡れた由美子の頬を 優しく撫でる。 その手に縋るように由美子は頬を寄せ、手を重ねる。 由美子の顔に安堵さえ浮かび始めた瞬間 籐谷はクスリと笑う。 そして、自分を見上げた由美子に籐谷は微笑む。 「…可愛いね。それに、とても綺麗だ。」 頬を赤く染め、キラキラと瞳を輝かせる由美子。 だけど、藤谷は無慈悲な笑みを浮かべ、 頬からパッと手を離し、あっさりと地獄に落とす。 「でも、もうイラナイ。」 腰から崩れ落ちるようにストンッと座った由美子に 藤谷は手を差し伸べることもせず、夜の街に消えた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加