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「お願いっ!!何でもするからっ・・・」
由美子は涙を流しながらそう叫び、
自分に背を向けた籐谷の背広を掴む。
フッと優しい笑みで籐谷は振り返った。
そして、幾筋も落ちる涙で濡れた由美子の頬を
優しく撫でる。
その手に縋るように由美子は頬を寄せ、手を重ねる。
由美子の顔に安堵さえ浮かび始めた瞬間
籐谷はクスリと笑う。
そして、自分を見上げた由美子に籐谷は微笑む。
「…可愛いね。それに、とても綺麗だ。」
頬を赤く染め、キラキラと瞳を輝かせる由美子。
だけど、藤谷は無慈悲な笑みを浮かべ、
頬からパッと手を離し、あっさりと地獄に落とす。
「でも、もうイラナイ。」
腰から崩れ落ちるようにストンッと座った由美子に
藤谷は手を差し伸べることもせず、夜の街に消えた。
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