第1章

2/4
前へ
/4ページ
次へ
0.5 気がつくと、見覚えのない場所に立っていた。 住宅街のようで、周りには家が建ち並んでいる。まだ空は明るいのに、人の気配は無い。 とりあえず家に帰りたいので、歩いてみた。 道をどんどん進んで行く。しかし、やはり周囲の風景に見覚えはない。 仕方が無いのでそのまま進んで行くと、真っ白な、オッドアイの猫がいた。 僕は、猫が好きだ。 友達から「猫」と呼ばれるくらい好きだ。 猫に近づいて、抱き上げてみた。 「こんにちは」 僕は猫に言う。もちろん返答なんかあるはずは─── 「降ろせよ、人間」 ………なくもなかった。まあ、猫が喋るということは─── 「ふむ、夢か」 不機嫌そうに猫が言う。 「夢でもなんでもいいが、早く降ろせ。引っ掻くぞ」 慌てて猫を降ろす。そのまま猫は歩き出した。 「あ、待って」 聞こえているのかいないのか、そのまま行ってしまう。 「待ってよ、ここから出たいんだ。どうやったら帰れるの?」 僕は猫を追いかけて、細い道に入っていった。 夢中で猫を追いかけていくと、小さな広場に出た。その真ん中に何故かマンホールがあって、その前に猫が行儀よく座っている。 「ここは………?」 「この世界の門だ。そこの穴が出入り口だよ」 ぶっきらぼうに猫が言う。どうやら僕がついてきているのを知って、連れてきてくれたらしい。 「ありがとう。ここから帰れるんだね?」 「ああ。ベッドから落ちて目が覚めるよ」 「それは嫌だな……」 僕が苦笑して少しマンホールから離れると、 「行かないのか?ずっとここにいてもいいが、永眠するぞ?」 「いや、行くけど……でいうか僕、ここに来なかったら永眠してたのか」 僕がまた苦笑してマンホールの縁に立つと、 「早く行けよ。いい感じにスッキリ目覚めるぞ」 そう言って猫が僕を押した。 「そりゃあベッドから落ちればね」 そう突っ込むまもなく落ち、辺りは暗闇に包まれた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加