消えた笑顔

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「前園さん、スマホとかないの?」 「持ってるよ」 「電子書籍とか、利用しないんだ」 「図書館タダだし」 「でも、いちいちここ来るのとか面倒じゃない?」 「でも、あたしここに来るのが好きだから」 「そうなんだ……」 「鹿沢クンは?」 「えっ……?」 「最近、よく図書館に来てるみたいだけど……」 「うん、まぁ……放課後、特にやることないし、仲のいいヤツいないし……なんとなくね」 「それって、友達いないってことだよね」  笑顔を見せる汐莉。 「前園さんだって、いつもひとりでいるじゃん」 「あたしは、ひとりになりたいだけだから」  学校という集団生活の場では、なかなかひとりになれる時間なんてものはない。逆にそういうところで、ひとりになろうとすると、めだってしまう。  "可哀想だから、仲間に入れてあげてもいいよ"的に、干渉してくる生徒もでてくる。頼んだわけでもないのに、無理に仲間意識を持たせようとする。  それを拒否し続けると、今度は手のひらを返して必要以上に無視したり、嫌がらせをしてくるようになる。それはそれで煩わしい。だから、適度に付かず離れずを繰り返す。友達ではないけど、ある程度は相手にしなければならない。  比呂樹にも、そういうところはある。汐莉の言うことも理解できた。類は友を呼ぶ。だからこそ、ふたりの出逢いは偶然ではなく必然だった。
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