落ちない砂

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「ねぇ、キミ……その本……」  近づき、芽衣に声をかける比呂樹。 「なんですか……?」  表情もなく、比呂樹をみつめる芽衣。 「いや……その……読んだら、しおりはちゃんと、元に戻してくれよな」 「これはあなたの、しおりですか?」  うさぎの栞を、比呂樹に見せる芽衣。 「ボクのじゃないけど、ボクの知っているコの、しおりだから」 「……」  うさぎの栞をページに挟み、本を閉じる芽衣。 「ゴメン……読書の邪魔して」  年下の芽衣に対して、恐縮している比呂樹。 「……」  返事もなく、比呂樹をみつめる芽衣。 「その本、好きなの?」 「今日、初めて読みました」 「スゴいね、もう四巻まで読んでるんだ」 「このしおりが、挟んであるところしか読んでませんので」 「え……?」 「このしおりの持ち主が、だれなのかを探してました」 「……!?」  芽衣に対して、険しい表情を見せる比呂樹。
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