落ちない砂

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「あなたは、このしおりに関わりあいの深いかただとお見受けしました」 「どういうことだよ? キミはいったい、だれなんだ?」 「……」  比呂樹の問いには答えず、芽衣は腰の砂時計を外して、比呂樹のほうに差しだす。 「砂時計……?」  訝りながら、芽衣から砂時計を受け取る比呂樹。 「オーバーライト・クロック……特定の人物の過去を、上書き保存できる砂時計です」 「……」  芽衣の言っている言葉の意味が分からず、放心状態の比呂樹。 「その砂時計を、逆さにしてみてください」  芽衣に言われたとおりに、砂時計をひっくり返してみる。砂の部分が上になり、下に砂が落ちるはずだが、中央のくびれの部分から下には、一粒たりとも砂が落ちてこない。 「あれ? なんだこれ……」  砂時計を振ってみると、砂は固まっているわけでもなく、サラサラしている。  どうやっても、砂時計の砂は下に落ちない。 「その、砂時計が止まっている原因は、この本のしおりの持ち主にあるようですね」 「……?」 「あなたは、一日をやり直し、過去を上書きすることができる権利を得ました」  淡々と比呂樹に説明を施す芽衣。
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