落ちない砂

5/6
前へ
/86ページ
次へ
「一日をやり直す……?」 「はい。その砂時計は、あなたの心の状態を表しています。いまのあなたは、時間が進むことに苦痛を感じているのでありませんか?」 「……」  芽衣の言葉に、言葉を失う比呂樹。 「できることなら、未来へ進むべき時間を、逆に過去へと進ませてほしい……そう思っているのではありませんか?」  この先の未来は、すぺて汐莉のいない世界。  そんな、未来を一生をかけて紡いでいく。  それは、苦痛以外の何物でもない。  芽衣の言っていることは、比呂樹の心の声を、すべて言い当てている。  比呂樹は芽衣の存在を驚異に感じていた。  初対面の、おそらく自分よりも年下の少女に、心の中を見透かされている。  彼女は何者なのか?  一日をやり直すとは、どういうことなのだろう。  彼女は、比呂樹の時間を、過去へと戻すことができるのか?  どう考えても、納得できる話ではない。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加