時の拘束

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「ボクはこれから、どうすればいい……どうやって生きていけばいい……」  手向けられている花に向かって、呟く比呂樹。 「キミのいない、あの図書館に行ったって、虚しいだけだよ」  暗く、沈んだ顔の比呂樹。  その比呂樹に、近づく人影……ダッフルコートの少女、芽衣。  芽衣の存在に気づき、しゃがんだまま、背後を振り返る比呂樹。傍らに、比呂樹を見下ろしている芽衣の姿。 「ここで亡くなったのは、あの、しおりの持ち主ですか?」 「わざわざ、ここまでついてきたのか?」  ゆっくりと立ち上がり、呆れた様子で芽衣を見る比呂樹。 「非礼はお詫びします」  とても、お詫びしているようには聞こえない、事務的口調の芽衣。 「ずいぶん、お節介なんだなキミは」 「それが、私の日課ですから……」  無表情で語り続ける芽衣。 「日課だかなんだか知らないけど、キミとは話すことなんかないよ」  またも、芽衣から逃げるように立ち去ろうとする比呂樹。 「このままで、いいのですか……?」  比呂樹にポツリと呟く芽衣。 「……」  比呂樹の足が止まる。
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