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「キミは……キミは本当に、ボクの時間を戻すことができるのか?」
「それは、あなた次第です……」
「……」
「あなたの意志の力が、過去を上書きするに見合うならば、必ずや願いは叶うはずです」
外した眼帯を、また左目にあてる芽衣。
「教えてくれ! ボクはどうすればいい? どうすれば、彼女に会える?」
勢い余って、芽衣の両肩をつかんで揺さぶる比呂樹……眼光鋭く、芽衣をみつめている。
「頼む、彼女に会わせてくれ! ボクを彼女が殺された日の、二月四日に戻してくれ!」
「殺されたのは、あなたと同じ年頃の中学生、前園汐莉さん。通り魔の犯行とされていますが、いまだに容疑者は確定されてないようですね」
「どうして、それを……」
疑いの目を芽衣に向ける比呂樹。
「ニュースで観ました」
「……」
「彼女を救う方法は、犯人を特定し、殺害を未然に防ぐことです。そのためには、当日の彼女には、その日と同じ行動をしてもらう必要があります」
「しかし、それじゃ……やり直しても、また同じことが起こるんじゃ……」
「一日をやり直せるのは、あなだけです。つまり、未来を知っているのは、あなた一人……あなたが、これから起こる未来を過去の人たちに伝えても、それを信じる人間は、ほぼ皆無といえます」
「……」
「本当に通り魔の犯行かどうかも、分からないのです。突発的な事件ではなく、彼女に殺意のあるものの犯行だとしたら、べつな日に違う場所で殺害されることもありえます。その場合、それを防ぐ手立てが、あなたには何ひとつありません」
「……」
「私はあなたの過去には、何も干渉できません。やり直せるのは、あなたが指定した、その日一日だけです。一度戻した時間は、元には戻せません」
「……」
「現在よりも、最悪な結果を招く可能性すらあります。しかし、あなたはそれでも彼女を救いたい。生きている彼女に会いたい……そうですよね?」
「もちろんだ」
ずっと、押し黙っていた比呂樹……ようやく口を開く。
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