時の拘束

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「現在に留まり、犯人が特定してから一日をやり直す手もありますが、私にも都合があります……のんびりと、あなたにつきあう時間もありません」 「ボクだって、みつかるかどうか分からない犯人をいつまでも待ってなんていられない」 「分かりました……それでは、まず時間操作に伴う弊害等をご説明します」 「弊害……?」 「当然ながら、あなたが過去に戻ることによって、四日前の二月四日から、現在の二月八日までの歴史が改変されます……」  淡々と説明を続ける芽衣。  やり直せるのは、過去の一日だけで、それ以降の現在までの時間は、自動で改変される。以降、芽衣と出逢うことはなくなり、その事実も改変される。  やり直した一日が、どんな結果であれ、それはもう元には戻せない。汐莉の殺害が回避されても、比呂樹が代わりに殺される可能性もある。その次点で比呂樹の存在する時間は消滅し、それがそのまま上書きされてしまう。  さらに、改変された歴史を確認することなく、現在へと戻ってしまうことが、最大のリスクとなる。自動改変の間に何があったのかが、記憶に残らないため、現在に戻ったときに不都合が生じる可能性があるということ。  それらのリスクやデメリットを差し引いたとしても、汐莉に会いたい……。  比呂樹の心は決まっていた。
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