消えた笑顔

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 昼休み。職員室に呼び出された鹿沢比呂樹は、担任教師に説教をくらっていた。  担任の受け持つ数学の小テストが白紙で提出されていた。比呂樹は、クラスの中では比較的成績上位者であるが故に、担任はその行いを見過ごすわけにはいかなかった。 「なんの、つもりだ」  担任の机の上には、白紙の答案用紙に、朱色の0点の文字。 「べつに……ただ、問題が難しかっただけです」 「最近のおまえ、少しおかしいぞ。まだ、E組の前園のことを気にしてるのか?」 「先生には、関係のないことです」  答案用紙を掠め取る比呂樹。 「失礼します」  担任に一礼する比呂樹。 「今度やったら、両親にきてもらうからな」 「……」  担任の言葉に構わず、職員室を出ていく比呂樹。
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