消えた笑顔

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 『ユニバーサル・クリエーター』というタイトルの小説。ある日、事故死して地獄に堕ちた男は、神からある使命を託される。  現世が荒れている原因は、地獄の存在を迷信だと思っている風潮によるもの。昔の古い地獄のイメージを一新し、新しい地獄を作りあげる。  その新しい地獄を作りあげたあかつきには、男を現世に戻すと神は約束する。  汐莉はずっと、その本ばかり読んでいる。シリーズ化されていて、全八巻もあるので、それなりに読みごたえはある。  比呂樹は、汐莉に出逢った当初は、なかなか汐莉に声をかけられないでいた。もともと、奥手なほうで恋愛経験も、まったくない。  実際、汐莉と比呂樹の関係は、いわゆる恋愛関係とは、微妙に違っている。お互い、告白もしていないし、交際しているという意識もない。  友達という感覚とも、また微妙に違う。学校ではあまり会わないし、会話もあまりない。  汐莉と比呂樹の接点は、図書館だけ。学校が休みの日以外は、ほぼ毎日来ている。  汐莉は本が目当てだが、比呂樹は半分は汐莉が目当て。けれど、あえてそれを汐莉に意識させずに、図書館を利用している。
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