11人が本棚に入れています
本棚に追加
汐莉を見かけるようになって、一週間が経ったある日、比呂樹は読書中の汐莉に接触を試みた。
「こんにちは」
ぎこちない、挨拶だった。
顔を上げ、比呂樹に目を合わせる汐莉。
「どうも……」
比呂樹を不思議そうな顔で見つめる汐莉。
「いつも、その本読んでるけど、おもしろい?」
「……」
本の横にある、ウサギの絵のしおりをはさみ、汐莉は比呂樹に本を差し出す。
「他人の意見を聞くより、ご自身がその目で確認するほうのが確実だと思います」
「え……!?」
そんな答えを期待していなかった比呂樹は、呆気にとられる。ただ、汐莉に話かけるための、取っ掛かりだった。
「確か、F組の鹿沢さんでしたね」
「あぁ、うん……キミは、E組の……」
「前園汐莉です」
「うん、よろしく……」
比呂樹は、汐莉が持っている本を、受け取ることを、ためらいつつ答える。
比呂樹が本を受け取らないのを察して、汐莉は再び、しおりを外してページをめくる。
「ごめんなさい、読んでる途中の本を、渡したりして……同じタイトルの本あるから、そっちを借りてください」
「うん……ありがとう……」
苦笑いを返す比呂樹。
最初のコメントを投稿しよう!