劣等感の勝利

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  木枯らしが びゅうびゅうと吹きすさぶ、 小春日和を待ち望んでしまう頃。 雨が降る度に深まっていく秋は、 もうすっかり冬の風情だった。 木陰に停められたマイクロバス、 その中から車内カーテンを 少しだけ開き、 100均で買った オペラグラスを覗き込む。 「あ、櫻井さん気を付けてくださいね」 背後から九鬼さんの声が 真っすぐ飛んできて、 「ハイッ」と背筋を伸ばした。 シートの上で正座しながら (もちろんパンプスは脱いだ)、 まじまじと人だかりを観察する。 なんか、 TAKUMIもどきとか RYOJIさんもどきとか KE-TAもどきが わらわらいる。 .
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