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 再会は、給湯室。と言っても、異動後、本社初出勤の朝に、洗い場から漏れてきた彼女の声を、たまたま通りかかった俺が耳にしただけだ。 『自分が淹れたお茶一杯で、みんなが気分良く仕事してくれたら、それだけでも嬉しいと思わない?』  3年ぶりに聞いた三谷先輩の声に、最初は驚いた。  俺が県外の支社に異動になった時につきあっていた恋人と結婚して、てっきり寿退社したものと思っていたから。  でも、以前と変わらない彼女の仕事へのスタンスに、思わず笑みが零れた。  三谷先輩は、新入社員研修時、俺の指導員だった。仕事に厳しく、決して妥協はしない。  それは、右も左もわからない新入社員相手でも、変わらなかった。会社のことは、彼女に一から叩き込まれた。 『担当した子をどこに出しても恥ずかしくないように育てるのが私の仕事なの』  それが彼女の口癖だった。
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