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目の前で次々と繰り広げられる名探偵の推理を眺めながらも、私はちっとも映画の内容に集中出来なかった。
圭太が私の隣で不機嫌そうに頬杖をついてぼんやり画面を眺めているのが、嫌でも視界の隅に入ってくる。
はあ……。
こんなはずじゃなかったのに…。
映画を見に行くって決まってからも、なんの映画を見るかで散々ケンカした。
私はアニメーションファンタジー。圭太はアクションを見たいと言って譲らず。
なんとか議論を進めて、ようやくミステリーに落ち着いたのに。
まさか吹き替えか字幕かでケンカになるなんて…。
「………。」
ぼんやり遠くを見ていた視線を引き締めスクリーンに焦点を合わすと、探偵に悪事を見破られた犯人がおいおいとわざとらしく泣き崩れていた。
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