第1章

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澄みきった遠い青空。 葉がすっかり落ちて枝ぶりが丸見えのシンボルツリー。 その近くで三本の旗が時々冷たい風に小さくなびいていた出勤時間。 お昼休みに 廊下の向こうからこっちに来る彼が見えた。 私は彼の方に真っ直ぐに向き直り ちょっと不満気な顔で待っていた。 ヨッて、右手を挙げて挨拶する機嫌がいい彼。 あっさり負けて いつもより大きく頷いて会えた喜びを伝える私。 彼が私の目の前に来て、向き合った。 ねぇ。髮、伸び放題じゃない? 照れ隠しに憎まれ口を言ってしまった私。 え?切って来たんだけど… えっ…そうな… 私が言い終わる前に 胸の前にぐいっと何か差し出す彼。 反射的にそれを受け取った私。 出張のお土産っ 早口で一言言った彼。 出張、行ってたんだ。 うん。 素直な彼の返事。 ありがとっ 降参してしまう私。 昨日の夜、 落ち込んでいたから 励ましてほしくて 何処にいるのか分からない彼に メールを送った私。 返信をくれなかった彼。 そんな彼からの サプライズのお土産は 甘酸っぱい りんごのお菓子だった。 家で食べて 美味しかったよってメールした私。 やっぱり彼からの返信はない。 ベランダから 夜空を見上げたらオリオンがキラキラと輝いていた。
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