第1章

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全く知らない場所、私物ではない衣類……今のこの状況で考えられることは、ひとつしかない。 俺は誰かに拉致されてしまったのだ。 ……もう少し正確に言えば、拉致監禁とも。 どうしてこんな冷静でいられるのか、自分でも不思議で仕方がない。 ほら、こういうのって騒いでもどうにもならないだろうし。 ……さて、どうしたものか。ここはベッド以外何もない。 とりあえず何かアクションを起こしてみるか? ベッドからおりて、もう一度部屋を見回してみる。 狭いな、少し窮屈に感じてしまう。狭いところは好きじゃないんだ。 息苦しさを感じつつ、深呼吸でもして気を紛らわそうとした時だった。 微かに音が聞こえた。 こんこん、と壁を叩くような音が。 誰かが扉をノックしたのかとも思ったが、この部屋に扉なんてものは存在しない。 間違いない。誰かが壁を叩いている。向こう側から。 もしかすると、この壁の向こう側にも部屋があるのかもしれない。
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