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「あっ…あぁ…」
青年が苦しそうなうめき声をあげて男の手首を掴む。
しかし、男の力は凄まじく、青年の力では振りほどくことなど不可能だった。
「だから…くだらねぇこと言ってんじゃねぇってのが…わかんねぇのか?」
男が、青年を掴み上げたまま屋敷の背面の壁に向かって歩き出し、青年を壁に叩きつけて壁を砕き、青年を豪雨の中に突き出す。
屋敷の背後は絶壁になっており、青年の足元では黒い幕のような物が波のようにうねっていた。
「だったらよぉ…お前が変えてみろよ!!」
「な…にを…」
「この下は《エルスカルド》に繋がっててな…手を離せば、下の世界の大地まで真っ逆さまだ…もうわかるよな?」
男の言葉に青年が目を見開き、男の手首に再び力を込める。
するとその直後、男が腕をゆっくり上げて青年の首から一瞬手を離し、服の胸ぐらを掴んだ。
「息子の最後だ…遺言くらい聞いてやるぜ?」
「…さまを…貴様は必ず殺す!そして必ず…この戦争を!!…!?」
青年がそこまで言った時、男の手が離され、青年の体は一瞬空中に浮いたかと思うと一気に180°傾いた。
そして次の瞬間、真っ暗な闇の中へと急降下した。
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