第1章 雷雨の孤島で

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カーン…カーン…カーン… 教会の朝を告げる鐘が小さな孤島を駆け巡るなか、寝室から現れたおかっぱ頭の少年が、ホールの長椅子の列を横切って階段を駆かけ上がり、2階へ向かう。 2階といっても、いくつかの客室とその入口の前を伸びる少し広めの木目調の通路があるだけで、他にはなにもない。 少年は、通路を真っ直ぐ進むと階段から3つ目の部屋の前で立ち止まって息を整えると、ノックをしようと拳を軽く握った。 しかしその直後、内開きの木製の扉がいきなり開き、少年は扉を開けた人物の足にぶつかって尻餅をついた。 「うわぁ!」 「おっと!ごめんよ、ルイ」 「ううん。大丈夫」 黒髪の青年が尻餅をついた少年(ルイ)に手を差し伸べ、ルイがその手を取って立ち上がる。 「ずいぶん慌てていたようですが何かあったんですか?」 「え?…あっ!そうだった!」 青年が、ズボンのホコリをはたいているルイに問いかけてルイがハッとして顔を上げる。 「えーっと…その…今日、雨だよね?」 「そう…ですね」 「じゃ、じゃあ!お買い物とか、外回りって、行かないよね!」 「まぁ、雨ですから…」 「だったら、あの~…」 「ふぅ…回りくどい言い方をしますね…」 ルイの本意を見抜いた青年がため息混じりに呟き、ルイの顔がパッと明るくなる。
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