第1章 雷雨の孤島で

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「しょうがないですね…」 ミリーの小さな呟きに、ルイの表情がパッと明るくなる。 「その代わり!壁とか壊さないようにしてくださいよ。この間あなたが空けた穴、塞いだばかりなんですから」 ミリーは強めの口調で2人に釘を刺すと、すぐとなりにあったベッドの上にそっと座った。 「はい、わかりました!」 ラナがニコッと笑って、ルイに背を向けてキッチンに向かい、その背中を見送ったミリーが小さく息を吐く。 するとその隣に、ルイがボスッと音を立てて座り、肩下げ型の革のかばんから辞書のような厚さの本を取り出した。 「あれ?…ねぇ、ルイ、私、そんな本買ってあげた覚えないけど…」 「え?……あっ、これ?これは『始戦記』って言って、ここに来た日に兄ちゃんからもらったやつなんだ」 「へぇ~、ラナがねぇ~…」 「うん!“上の世界”の字で書いてあるから最初は全然読めなかったんだけど、この間兄ちゃんに教わってやっと読めるようになったんだ」 ルイが嬉しそうに笑って、本の表紙を開き、ミリーが体を傾けてルイの肩越しに本を覗き込む。 しかし、そこに記された文字はおかしな図形のようなもので、ミリーは思わず顔をしかめた。
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