漢達のばれんたいん 弐之砦

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漢達のばれんたいん 弐之砦

絆愛恒例行事“雪中摩羅尊(セッチュウマラソン)”も終わった二月… 突如冬の寒空の下へ、全校生徒が呼び出された。 全員が呼吸にさえも気を使い待機していると、『はあっ!』の掛け声と共に馬の蹄の音がする。 『来た…』 全員が心で呟くも声に洩らさず、微動だにしない。 そんな皆の前に自己満足顔の校長が馬に乗り参上した。 今回着用するは、勇ましい蟹がハサミで身構えるかのような蟹形兜(カニナリカブト)。 『か…かに?』 声には出さず、一同同じ言葉を目で発している。 そして普段と違い、今日は羽織袴の姿ままで、兜のみの着用だと言うことも謎である。 皆の視線が兜に注がれる中、校長は悠々とマイクを手にした。 『来る二月十四日…』 “ボンッ” ブスブスと燻ったような音と煙を出したと思ったスピーカーが、毎度のごとく爆発した。 一瞬、その場の何人かはビクリと飛び上がったが、さして動じていない。 校長も『やわなスピーカーばかりよのう…』と唸りながらチラリと煙をあげるスピーカーを見たものの、意味のなさぬマイクを手放さない。
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