プロローグ 

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人は何故漫画や小説を読むのかと、少年はふと考えたことがある。 歳相応に散らかった部屋。 その部屋の床一面にはこれでもかというぐらいに漫画や小説がぶっ散らかされており、足の踏み場を見つけることに苦労しそうな状況だった。 汚い。たったその一言で六畳ほどの部屋の全体像が説明されてしまうような状態。 しかし、そんな部屋であってもまともに周囲の風景から突出して見えるものは存在した。 それはこれまた参考書が開きっぱなしで散乱している年季の入った勉強用の机であったり、この部屋の主人が着る洋服等が収納されているクローゼットであったり。 人として当たり前というか、生きていくうえで欠かすことのできない人間の本能に基づいた行動である『睡眠』を貪るために必要なベッドであったりした。 「……ん……」 部屋に溢れかえる膨大な知識の束の中、ベッドの上に眠る一人の少年は寝返りを打った。 --少年は『夢』を見ていた。 黒髪黒眼。父親は会社員で母親は専業主婦。 両親の家系に異国の血を持つ者は居らず、ただただ純粋にこの国の住人『日本人』であるとしかいえないこの少年。 彼が現在直面しているのは、彼自身の『夢』であり、今宵十八をむかえる非凡な少年が憧れる一つの『結末』(みらい)でもあった。 --火炎に焙られた熱く厚い建物の外装が壮大な音を立てて崩れ落ちた。 そう、それは彼の『夢』だった。
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