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--逃げ惑う群衆の悲鳴こそが再々の甘味であると言わんばかりに、後続して爆発が、その余波に吹き飛ばされた瓦礫が宙を舞った。
そう、恐らく。『夢』だ。
--少年の目に映るのは突如として起き、人の知識と実践の塊であった街は、一転巨人にでも食い散らかされたような廃墟郡へと変わり果てた。
こんな『非日常』が自分の周りに転がってくるはずはないから。
--少年は見上げていた。黒いフードを爆風になびかせた影を。少年は知っていた。その影の掲げる掌に燃える球体こそが、この悪夢の諸悪の根源だと。
全くもって馬鹿馬鹿しい『夢』。
そんな『非日常』との別れを告げるように、ジリリリリッ! と電子的な音が少年が眠るベッドの上から鳴り響く。
更に寝返りをうった少年が、ごとんという鈍い音と共に散らかされた本の上に落ち、その痛みを気に目を覚ます。
「……朝、か……」
煙の晴れない頭で立ち上がった少年は、ぐしゃぐしゃなベッドの上にあるスマートフォンに手を伸ばすと、喧しく鳴り続けるアラームを切った。
それは彼が数えきれないほど繰り返した『日常』の始まりでもあった。
目を覚ました少年はまず初めに寝ていたベッドの反対側に位置する窓にかけられたカーテンを開けた。
窓の外に広がるのはこれまた代わり映えのない、見上げるのがどこか怠くて、けれども存外それが別に嫌でもないような、そんな青空だった。
本に埋め尽くされた足の踏み場のない汚い床を器用に移動し、クローゼットまでたどり着いた少年は、いそいそと学校に登校するための制服に着替え始める。
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