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翌日の話
「女の子はツインテールの高さがテンションのバロメータなの」
「ちょっと横文字が多すぎて何を言ってるのかよくわからないですね」
ガリ勉くんは仏頂面で答える。
いまどきの政治家か!というツッコミもしようかと思ったが、誰にも理解されないと思って口をつぐんだ。
ガリ勉くんは美沙の頭を見て、耳の横くらいで結われた長い髪へ注目する。
美沙はその二本を手のひらで持ち上げて肩をすくめる。
「今日は中の上ってところね」
「そういう話はもっとあからさまにテンションが低いかテンションが高いときにしてくださいよ」
「あからさまにテンションが低いかテンションが高いときは、こんなくだらない話はしないわよ。今日はこれくらいのどうでもいい話をしたくなる中途半端なテンションなの」
「一理ありますね」
ガリ勉くんはうなずいて、手に持っていた文庫を閉じる。
美沙は体重を気にしてか、手に持っているポッキーを食べるか食べないか逡巡する。
「食べないんですか」
あからさまに体重が重いか軽いかすれば決めやすいのだけど、食べるか食べないか微妙な体重なのだ。
とは、口が裂けても言えない年頃の女子である。
それでも手に持ってしまった以上、食べないで袋に戻すのもおかしな気がして、ぱくりと口に運ぶ。
そんな言い訳。
「けっきょく食べるんですか」
「食べるよ。食べますとも」
「おいしいですか」
「おいしいよ」
素っ気なく答える美沙を見ているガリ勉くんは彼女の頭部に目を向ける。
スススッと、ツインテールの位置がちょっとだけ上昇した。
ガリ勉くんはその怪奇現象を見なかったことにした。
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