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翌日の話
「ガリ勉くん、バイトはじめたでしょう?」
「なんで知ってるんですか」
「昨日、偶然前を通りかかったのよ。そしたら店の中で働いてるガリ勉くんを見つけたの」
「え、やだ。ストーキングですか」
「偶然って言ったのが聞こえなかったかしら」
美沙の言及に、ガリ勉くんは逃れられないと思って肩をすくめた。
まさか姿を目撃されてしまったのでは、誤魔化しようがない。
彼らの通う高校は、原則でバイトが禁止されている。
ガリ勉くんは根が真面目であるので、それを守って、あからさまに校則違反になるようなことはしない。
あくまで『原則』であることを利用し、長期休暇の間は教師からの許可を得てアルバイトをしていたりした。
しかし、どうやら今回のバイトは様子が違うようである。
ガリ勉くんは教員からの許可ももらっていないらしく、バツが悪そうに美沙に目を向けた。
「バラさないでくださいよ?」
「もちろん。そんなことを先生にチクるような、カップの小さい女じゃないわ」
たぶん器の小さい女じゃないと言いたいんだろう。
「それにしても、どうしたの。働かないとキツイ状況?」
「まぁ、年末に向けて稼いでおかないと、何か問題があったときに年を越せないかもしれないですからね。年末年始はどうしても金がかかるんです」
「ご飯とか作ってこようか?」
「心配無用です。僕だって伊達に一人で暮らしているわけじゃないんですから。それに、学校に隠れて働いている生徒なんて他にいくらでもいますし、バレやしませんよ」
たしかに、クラスメイトでもファストフード店やファミレスで働いている姿を見かけることがある。
彼らも学校には内緒でアルバイトをしているのだろう。
「ところでウサミミさん。何カップなんですか?」
「あ、そこ気になるんだ?」
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