おすすめクソビッチ

15/20

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
翌日の話 「ねぇねぇガリ勉くん、私綺麗?」 マスクをつけた美沙が楽しそうにガリ勉くんに尋ねる。 「急に都市伝説チックに話しかけてこないでくださいよ。綺麗ですよ、綺麗です」 「こーれーでーもー?」 ぺろーんとマスクを外す美沙が、いたずらっぽい笑顔を見せる。 子供っぽい仕草で口元を隠す。 ガリ勉くんは釣られて口角を上げた。 また何かに影響されたのだろう。 「ネットで見たんだよー。口裂け女ってこわいねー」 口の両端を引っ張る美沙に、ガリ勉くんは溜息をもらす。 「わざわざどうして怖いものをネットで調べたんですか。バカなんですか」 「うるさいなー。いいじゃんべつに。怖いもの見たさってやつだよ」 「しかも、口裂け女なんて古いトピックをいまさら」 「伝説に古いも新しいもないと思うんだ。伝説は伝説だよ」 「急に格言みたいなこと言わないでくださいよ」 ガリ勉くんは呆れたように美沙に言う。 美沙は携帯を操作して、ガリ勉くんにそのページを開いて見せる。 ガリ勉くんはそこから顔を逸らす。 「どうしたの、ガリ勉くん。見てよ」 「いえいえ。僕は結構ですよ」 「あー、こういうの苦手なんだね?」 悪魔のような微笑と携帯の画面をガリ勉くんに向けながら、美沙が彼ににじり寄る。 「やめてください」 「ある日の夜のことである。仕事で遅くなった私は、誰もいない街灯も疎らな路地を歩いていた。すると、後ろから――」 「本気で怒りますよ」 ガリ勉くんがじっとりとした目で睨んでくるので、美沙もなんだか可哀想になって、さすがに口をつぐむ。 首をひっこめた彼女は、代わりに舌を出して肩をすくめた。 「今度いっしょにホラー映画見に行こうか」 「怒りました。あー、もう怒りましたよ」 「ごめんごめん」 謝りながら、また美沙は画面をガリ勉くんに見せる。 ひぃっと悲鳴をあげる彼を楽しそうに眺めた。  
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加