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翌日の話
週明け、月曜の教室というのはどこか浮足立っている。
あくびをしながら授業をダルイと言う者。
二日ぶりの友達との再会に、甲高い声をあげる者。
ひたすら本のページをめくる者。
「ガリ勉くん。どうしてあなたはずっと平常運転なの」
「逆に、急にどうしてそんな質問してきたんですか」
「ほら、やっぱり親友として、ね。もっとガリ勉くんを知っておく義務があると思って」
「そんな面倒な義務感に目覚めないでください」
昨日の美沙の心情描写なんて一切知るところのないガリ勉くんにとっては、今の彼女は、週明けから面倒な絡み方をしてくるだけの相手だ。
美沙はこほん、と咳払いをして。
「ほら、見てよ。私のツインテールを」
「テンション低めですね。原因は何ですか。生理ですか」
「そのデリカシーの欠片が原子レベルで存在しない質問をするのやめななよ。もっと心と心の問題だから。強いて言えばガリ勉くんとの関係についてだから」
もちろん、美沙との間で何か特別なことがあったわけではないガリ勉くんは、彼女のその質問に戸惑いの色を表す。
彼は読んでいた本を閉じて、美沙の顔を覗きこんだ。
「僕が何かしましたか」
美紗としては、本当はガリ勉くんに察してほしかったのだが、素直に昨日の苦悩について吐露する。
かくかくしかじか。
「うっわ、メンドクサイ」
「ひどい!」
「だいたい、あなたの話では、昨日の時点で僕を疑わないと決めたんじゃないんですか。どうしてこんな面倒な話を僕にバラすんですか。思い切り疑ってんじゃないですか」
「違うの違うの。ただ、本当に私たち親友なのかなって、心配になっちゃったというか……」
「全然違くないじゃないですか。ていうか、恋人にするような質問を親友という関係に当てはめて僕へ投げかけるのはやめてください。ていうか、親友親友と連呼するのも恥ずかしいですね!」
親友なんて単語、言葉にすれば言葉にするだけ恥ずかしいものだ。
それに気付いた美沙もガリ勉くんも顔を真っ赤に染め上げて、黙り込む。
「まぁ、不安にさせたのなら謝りますよ。僕自身、友達ってものと付き合うのがイマイチ不慣れなもので」
「うん、私もゴメン……」
ガリ勉くんの前の席で話を聞いていたクラスメイトは、「いやいや、それ完全にカップルの会話ですよ」と思っていた。
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